はじめに

抜歯の主な原因

抜歯の主な原因

グラフは2018年に「公益財団法人8020推進財団」が、全国の歯科医院における抜歯の主な原因を調査したものです。
割合は多い順に、歯周病(37.1%)、次いでむし歯(29.2%)、破折(17.8%)となっています。
破折とは歯が折れてしまうことであり、外傷(ケガ)を除くと、その原因の多くはむし歯です。
このことからわかりますように、歯を失う2大原因は『むし歯と歯周病』です。

プラーク(歯垢)、バイオフィルム、歯石について

「プラーク(歯垢)」、「バイオフィルム」、「歯石」。
これらの言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないかと思います。なんとなく、お口の中の健康を損なうものであることは想像できるものの、それらがどう違うのかはよくわからない。そういう方は多いのではないでしょうか。
これらの言葉は、歯の病気を理解していただくうえで重要なキーワードとなりますので、はじめにご説明しておきたいと思います。

口の中には500~600種類の菌がいるといわれ、一部の菌はヌルヌルしたかたまりとなって歯に付着します。
この黄白色を帯びた粘着性の物質を「プラーク(歯垢)」あるいは「バイオフィルム」と呼び、わずか1mgに数億から数兆もの細菌が存在します。
よく食べかすと混同されますが、プラーク(歯垢)=バイオフィルムは食べかすではなく、細菌のかたまりです!!
これは、前述しました歯の2大疾患であるむし歯や歯周病を引き起こす諸悪の根源となっています。
ちなみに、昔から歯垢のことを「プラーク」と呼んできましたが、研究により、プラークの構造が お風呂の排水溝やシンクの水場などに見られる「ヌルヌル」と同じ構造であることが分かってきました。このヌルヌルを指す言葉として登場してきたのが「バイオフィルム」なのです。つまり、プラーク(歯垢)とバイオフィルムは同じものを指します。
ヌルヌルしたプラーク(歯垢、バイオフィルム)は水や洗口剤でうがいをしたくらいでは落とせません。歯ブラシや歯科医院の専用器具などの物理的処置(ゴシゴシこする)によってのみ落とすことができます。
これらを取り除くには、患者さんご自身による正しいブラッシングが欠かせません。しかし、患者さんご自身ではどうしても取り除けない部位もでてきてしまいます。そのような部位は、歯科医院で適切に除去してもらうことをおすすめします。

歯石とは、歯に付着したプラーク(歯垢、バイオフィルム)が唾液中に含まれるカルシウムやリン酸などと反応して石灰化し、石のように硬くなって歯の表面に付着したものです。
歯石は「死んだ細菌の固まり」であり、プラーク(歯垢、バイオフィルム)のようにそのものが歯周病を引き起こす原因にはなりませんが、歯石の表面の凹凸でプラーク(歯垢、バイオフィルム)が付着しやすい状態です。
そのため、歯石の上にプラークが付着して石灰化し、さらに大きな歯石となり、歯の周囲の炎症をさらに招くという悪循環となっていくのです。プラークが歯石になってしまうと歯磨きで除去するのは不可能です。
重度の歯周病で抜け落ちた歯を見てみると、そのほとんどに歯石が付着しています。
歯科医院でこの歯石を取り除くことが、歯周病の改善には欠かせないのです。

プラーク(歯垢)について
プラークが付着している↑

それでは、実際のプラーク(歯垢、バイオフィルム)を見てみましょう。
歯頚部にたくさんのプラーク(歯垢、バイオフィルム)が見られます。
繰り返しますが、プラーク(歯垢、バイオフィルム)は食べかすではなく、細菌のかたまりです!!
歯肉は はれぼったくなり、暗赤色を示しています。

プラーク(歯垢)について

図をご覧いただき、プラーク(歯垢、バイオフィルム)について少し詳しく見ていきましょう。

① むし歯の原因菌である球菌と、歯周病の原因菌である嫌気性桿菌は普段から口の中に住み着き、唾液中を浮遊しています。
② 砂糖分が口の中に入ってきますと、球菌がグルカンというネバネバした物質を出して、歯の表面に引っ付きます。それらが凝集して集落を形成したのがプラーク(歯垢、バイオフィルム)です。
③ これをそのまま放置しておくと、空気の少ない環境が大好きで凶悪な性質を持った嫌気性桿菌がプラーク(バイオフィルム)に加わり、歯肉炎や歯周病を引き起こします。

次に、実際の歯石を見てみましょう(写真①)。
歯石の表面はザラザラしており、この凹凸のため、さらにプラーク(歯垢、バイオフィルム)が付着しやすい状態となっています。ご自身で歯石を取ろうとする方もいらっしゃるようですが、歯の周囲の組織を傷つけてしまうので決してお勧めできません。定期的に歯科医院で除去してもらいましょう。
写真②は、歯科衛生士による歯石除去後です。

写真①:歯石がたくさんついている
写真①:歯石がたくさんついている
写真②:きれいになった
写真②:きれいになった

ルーペ(拡大鏡)および
マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)の使用について

ルーペ(拡大鏡)およびマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)の使用について
ルーペ
ルーペ(拡大鏡)およびマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)の使用について
マイクロスコープ

当院では治療に際して5倍率のルーペ(拡大鏡)を常用し、さらに状況に応じて最大80倍まで拡大できるマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使用して視野の確保に努め、精密な処置を心がけております。
口腔内は暗く見えにくい環境のため、肉眼よりも鮮明に口腔内を視ることができるルーペやマイクロスコープを使用することにより、初期のむし歯や歯周病、詰め物やかぶせ物の適合状態などの小さな異変も見逃さないよう努めております。